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ちょいと昔話を—細胞毒性を測るLDHアッセイ法が今でも使用されているとは

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先週金曜日(2026年10月16日)、研究用試薬の販売最大手の富士フイルム和光純薬から、
「細胞毒性試験に最適なLDHアッセイキット」の宣伝メールが着信しました。

宣伝されていることは、LDHアッセイキットを販促するだけの価値があること、それだけLDHアッセイが多用されていることを示しています。
LDHとは乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase)のことで、解糖系の最後にできるピルビン酸を乳酸に変える反応に働く酵素ですから、どの生細胞中にも必ずあります。

それがもし細胞外に漏れ出ているとすれば、もとの細胞が強いダメージを受けていること、あるいは死んでいることを示唆しています。

そのため細胞外のLDH活性を測定すれば、もとの生細胞群がどのくらい死んでいるかがわかります。

実は、筆者は理化学研究所にいた時代に、血中LDH活性上昇が肝障害の指標になるという1980年代の一般常識を頼りに、直径6cmの培養皿中にある培養細胞(体内の臓器中の細胞数に比べれば4桁以上も少ない少数です)から、培養液中に放出されたLDH活性を、なんとか測れないかと、我流で試してみていたのですが、アッセイ系をいろいろと工夫してみると、意外に簡単にLDH活性が測定できることを見出していました。

そこで、細胞培養系で、細胞傷害を起こす何らかの操作後、生き残っている培養細胞数を顕微鏡下で一つ一つカウントするというたいへん面倒な作業をやめ、このLDHアッセイ法を細胞外の培養液に適用して、死細胞数を一挙に推定する方法を1990年頃に開発していました。

この方法を応用して、in vitroの培養がん細胞を対象にして、抗がん剤とLAK細胞(リンフォカイン活性化キラーリンパ球)の併用殺がん細胞効果を測定したり(Ref. 1)、市販の点眼剤の細胞毒性を直接測定していました(生きているウサギを使わない動物実験代替法の原点です)(Ref. 2)。

論文発表したのは1992年で、今から34年も前のことです。

もちろん当時は、生成AIなどありませんでしたから、PubMedにある膨大な過去の文献を総ざらいする気力もなく、「培養系でLDHアッセイ法を開発したのは自分達ではないかな~」と、なんとなくオメデタイ状況だと考えておりました。

しかし、今の生成AIに徹底調査をさせてみると、さすがに世界には先達がいるものです。

ChatGPTでは、

培養細胞の傷害を培養液中へ漏れ出たLDH活性で定量する方法として、よく引用される初期報告は次の論文です。
著者らは、培養皮質神経細胞の培養液中に放出されたLDH活性を測り、グルタミン酸による傷害の定量に使いました。
放出LDH量が傷害されたニューロン数に比例したと報告しています。
 → Ref. 3(Koh JY, Choi DW.)

ただし、「世界で最初」と断定するのは少し注意が必要です。
これは培養細胞の傷害をLDH流出で定量する方法として広く引用される初期報告ですが、LDH放出を細胞傷害の指標に使う関連研究は他の系でも行われていました。

したがって、より正確には「培養皮質神経細胞におけるLDH流出定量法の代表的な初報」と表現するのがよさそうです。
他の系では、確認できた範囲では、1978年の肝細胞傷害の研究が、培養細胞系でLDH放出を細胞傷害の指標として使った早い報告の候補があります。 → Ref. 4(Fernandez-Cruz E.)
患者由来リンパ球と分離肝細胞を用いた試験で、肝細胞からのLDH放出増加を細胞傷害の証拠として報告しています。
ただし、これを「世界で最初」とまでは断定できません。
既存文献を網羅的に照合できたわけではなく、ここで確認できた中での早い例です。
また、この論文はリンパ球による肝細胞傷害の測定であり、Koh & Choi(1987)のようにLDH流出量を培養細胞の傷害程度と対応づけて定量する方法論の論文とは、目的が異なります。

と、まあ、注意まである丁寧な回答でした。
今から思えば、筆者らは、知らずに Koh & Choi(1987)やFernandez-Cruz(1978)の後追い実験をしていたことになります。

1990年代初期とは、これらの初報も知らず、生成AIに追い立てられることもなく、無知の幸せを享受していた、のんびりした時代でしたね。(その後、2008年にリーマン・ショックが起こって世界的な金融危機に陥り、かつては潤沢だった公的機関の研究費もやせ細りました。)

ただ、当時の開発方法が未だに使用されており、キットとして商品化され販売されていることは、すでに生物実験の教科書レベルに達している堅固な測定方法にまで昇格していると考えられ、感慨深いものがあります。

References

1.Kawai K, et al.
Additive effects of antitumor drugs and lymphokine-activated killer cell cytotoxic activity in tumor cell killing determined by lactate-dehydrogenase assay.
Cancer Immunol Immunother 1992;35:225-229.

2.Sasaki T, et al.
Detergent cytotoxicity : Simplified assay of cytolysis by measuring LDH activity.
Toxicol In Vitro 1992;6:451-457.

3.Koh JY, Choi DW.
Quantitative determination of glutamate mediated cortical neuronal injury in cell culture by lactate dehydrogenase efflux assay.
J Neuroscience Methods 1987;20:83-90.

4.Fernandez-Cruz E,et al.
Hepatocyte damage induced by lymphocytes from patients with chronic liver diseases, as detected by LDH release.
Clin Experimental Immunol 1978;31:436-442.

You Tubeで【自家がんワクチンとは】をご覧ください。

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