従来から「赤ワインを飲めば心臓病にならない」とか、「〇〇を食べれば××が治る」とかの話題がマスコミで盛んに喧伝されてきましたが、どれも真偽のほどは不確かで、統計学的な観点からすると信頼性はひどいものでした。しかし、標題にかかげたのは、ハーバード大学の専門家が真面目に実施した大規模調査の成果(Ref. 1)ですから、信頼性が高いので紹介します(この情報は、米国臨床腫瘍学会ASCOからの通信によります)。
対象としたのは953名のStage III大腸がん症例で、術後化学療法中か化療6ヶ月後に検査を受けた患者です。
この方達に、前向き調査で(つまり、調査を始める時点から将来に向っていること、ここが信頼性確保のキーポイントです)、毎日のコーヒー、デカフェコーヒー、ハーブ不含茶の飲用杯数を報告してもらったのです。
7年間の追跡後にこれら症例の再発率、死亡率を
Cox proportional hazards regression model
という統計学的検定法で解析したところ、
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1日4杯以上のコーヒーを飲んだ患者では、ほとんど飲まなかった患者に比べ、大腸がんの再発リスク、死亡リスクが統計学的に有意に低かった、と出てきました。
(HR, 0.48; 95% CI, 0.25 to 0.91; P(trend)=0.002)。
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デカフェコーヒー、ハーブ不含茶を飲用していた患者は、コーヒーをほとんど飲まなかった患者と差がありませんでした。
ここで注意願いたいのは、「だから1日4杯以上のコーヒーを飲めば大腸がんにはならない、ということではない」という点です。
すでにStage IIIの大腸がんになっていた患者群で、1日4杯以上のコーヒーを飲用した患者群では、「術後に大腸がんが再発して死亡するリスクが低かった」という“相関関係”が分かっただけで、コーヒー飲用と大腸がん再発の‘因果関係’が分かったわけではないのです。
「だから1日4杯以上のコーヒーを飲めば大腸がんにはならない、に違いない」と思い込むのは読者の勝手ですが、、、、、、。
Reference
1. Guercio BJ, Sato K, Niedzwiecki D, et al.: Coffee Intake, Recurrence, and Mortality in Stage III Colon Cancer: Results From CALGB 89803 (Alliance). Published online before print August 17, 2015,
doi: 10.1200/JCO.2015.61.5062