非小細胞肺がんは、本邦でも患者数が非常に多く、今後も増加すると予想されています(ちなみに「2020年におけるがん患者数の推計によると、男性では肺がんの新患者数が約91000人、女性では約34000人になる」と予測されています(Ref. 1)。
2015年12月に、免疫チェックポイント阻害剤・オプジーボが「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に承認され、治療対象がメラノーマから適応拡大されました。そのため、現在、受診者数が急増しています。
しかし同時に、重大な副作用も次々に明らかになってきています。今年の2月に改訂されたオプジーボの添付文書では、
・ 間質性肺疾患
・ 重症筋無力症、筋炎
・ 大腸炎、重度の下痢
・ 1型糖尿病
・ 肝機能障害、肝炎
・ 甲状腺機能障害
・ 神経障害
・ 腎障害
・ 副腎障害
・ 脳炎
・ 重度の皮膚障害
・ 静脈血栓塞栓症
・ Infusion reaction(点滴時に出てくる発熱、悪寒、そう痒、発疹、高血圧、低血圧、呼吸困難、過敏症など)
が挙げられ、死亡例も報告されています。
要するに、リンパ球による免疫反応を停止させるブレーキ分子・PD-1にオプジーボが結合してブレーキを外してしまうため、それまで体内に隠れていた「自分の体の細胞に攻撃をしかけるリンパ球」の暴走を許してしまうのです。
そのため、出てくる症状は、自己免疫疾患が悪化したときに出てくる症状とほとんど同じになります。
もし、患者様が自己免疫疾患の素因を持っている場合(いつのまにか体内で「自分の体の細胞に攻撃をしかけるリンパ球」が活性化してしまっている場合)、オプジーボ投与後に、その症状が強くなって表面化します。
この自己免疫疾患様症状を治療するために、ステロイド剤や免疫抑制剤(インフリキシマブ、ミコフェノール酸モフェチル、免疫グロブリン等)を投与してしまいますと、
せっかくオプジーボで増やした「がん細胞を攻撃するリンパ球」も一緒にドサっと殺してしまうため、
・ がん治療が「元の木阿弥」に
なってしまいます。
本当は、「がん細胞を攻撃するリンパ球」だけを増やし、「自分の体の細胞に攻撃をしかけるリンパ球」を抑え込むのが望ましいのですが、このような都合の良い結果をもたらすオプジーボの使用法は、まだ開発されていません。
そこで、弊社では、
(1) あらかじめ、自家がんワクチンで「がん細胞を攻撃するリンパ球」をできるだけ増やしておき、
(2) 後から、できるだけ少量のオプジーボを少ない回数投与する、
という方法が良いのではないかと考えています。
つまり、
「がん細胞を攻撃するリンパ球」/「自分の体の細胞に攻撃をしかけるリンパ球」 の比
をできるだけ上げてしまい、(相対的に)不都合な副作用が顕現する可能性をできる限り少なくしよう、という、
“アクセル・オン/ブレーキ・オフ戦略”
です。
自家がんワクチンには問題となる重篤なグレード3~4の副作用は今のところ全くありませんが、オプジーボの方には多々あります。事前にオプジーボ治療ご担当の先生と十二分に相談の上で、“アクセル・オン/ブレーキ・オフ戦略”を採用されることを願っています。
Reference
1.肺がんの疫学
https://niizashiki-hp.jp/documents/LungCancerSlide-1_000.pdf
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