乳がん治療の投稿論文がわずか2日で査読を通過、出版されました ~その1~ 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

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乳がん治療の投稿論文がわずか2日で査読を通過、出版されました ~その1~

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昨年2025年に、乳がん手術後に遠隔臓器に転移したことが発見された患者様にとって朗報となる、以下のセルメディシンニュースを発信しておりました。

No.649 達成!世界新記録:“自家がんワクチン”、転移した乳がんで世界最長の延命効果を示す- プレスリリースを発信しました→ https://cell-medicine.com/topics/2756

No.650 達成!世界新記録、自家がんワクチン、転移した乳がんで世界最長の延命効果を示す- (続1)ターゲットトライアルエミュレーション法とは→ https://cell-medicine.com/topics/2763

No.651 達成!世界新記録、自家がんワクチン、転移した乳がんで世界最長の延命効果を示す- (続2)高い安全性があります→ https://cell-medicine.com/topics/2773

No.674 転移した乳がんで世界最長の延命効果を示す“自家がんワクチン”:正式論文が出版されました→ https://cell-medicine.com/topics/2863

これらのニュースは、尾道市とその周辺で、自由診療にて自家がんワクチン療法を受診された患者様を、最長で35年間に渡って追跡調査した結果から導きだされたものです(Ref. 1)。

さて、今回は、これらのニュースの根拠になった学術論文の著者自身が、

・自らの論文の「欠点」に気が付いたこと、
・それをそのまま放置せず、研究者としての良心に基づいてその修正を試みたところ、「欠点」を補って余りある“自家がんワクチン”の実力に気が付いたこと、
・その点を記載した論文原稿を「国際学術誌の編集長あての手紙(Letters to the Editor)という形式の短い論文にまとめて投稿したところ、『わずか2日で、クレームなしで査読を通過、あっという間にその論文原稿が出版受理され、仮出版された』

というお話です。

(医学生物学分野では、通常なら、論文投稿から出版までに、その分野の専門家の審査を受ける査読段階であれこれクレームが付き、修正して再投稿しても、出版受理までは数ヶ月かかる、その後すぐにネット上で仮出版されても、誌上に印刷されて出る本出版まではさらに数ヶ月かかるのがごく普通です。)

世間的によく知られている Nature や Scienceというような「超一流学術誌」でなくても、特定の狭い分野の専門家にはよく知られているその学術分野に特化した著名な学術誌というものが、世界には専門分野の数だけ多数あります。

乳がん臨床医向けの“Clinical Breast Cancer”誌もその種の学術誌です。

(日頃忙しい乳がん担当の臨床医は、学術論文を滅多に読まないとしても、論文が出版される学術誌の名前くらいは知っていますよ!)

昨年、この学術誌に発表した筆者らの正式論文(Ref.1)の「欠点」とは、
「達成!世界新記録、自家がんワクチン、転移した乳がんで世界最長の延命効果を示す」という事実は間違いないのですが、延命効果の計算方法に問題が潜んでいたことです。

このときの論文では、(1)「乳がんの遠隔転移が検出された時点を起点」として、検出後のどこかで自家がんワクチン(AFTV)が投与された方々で、
AFTV投与前後6ヶ月間は抗がん剤治療を受けていない(Optimum AFTV Set治療に絞りこんだ)患者群〔AFTV群〕
と、
転移検出後、一度も自家がんワクチンが投与されなかった患者群〔対照群〕
とを比較したとき、計算上では、世界最長の延命効果がありました。

転移検出日から、患者さんの丁度半数が亡くなるまでの期間(中央値)が
 〔AFTV群〕では、12.85年
 〔対照群〕では、 2.81年
で、明瞭な統計学的な有意差(p=0.00365)がありました(Ref. 1)。

しかし、より直接的に「自家がんワクチン“による”延命効果があった」というためには、

(2)転移が検出された時点ではなく、AFTV投与の有無が観察期間中に変化することを考慮して、
  (雑駁に言えば、「AFTVを投与した時点を起点にして」)
〔AFTV群〕と〔対照群〕とを比較しなければならないというのが学術的なルールです。

なぜかといえば、〔対照群〕の方々と〔AFTV群〕の方々の転移検出日を起点にそろえることは簡単ですが、〔AFTV群〕の方々では、転移検出日からAFTV投与日までの期間が、自由診療であるために、バラバラなのが困った問題を起こします。

乳がんは転移しても、がんの進行速度はゆったりしていますから、患者さんも担当医も急いで何かの治療を始めることはしません。
まして、自家がんワクチン〔AFTV〕療法は自由診療でのみ受診できる方法ですから、患者さんにとってはかなりの出費を伴います。

そのため、乳がんの転移検出日から見ると、AFTV療法を受診されたのは、早い方で1ヶ月以内から、最も遅い方では5.6年もたってからとなっていました。

これによって転移検出日からAFTVを投与するまでの期間が〔AFTV群〕では、本当は未だAFTVを投与されていない期間があるのに、あたかも転移検出日から亡くなるまでの全期間がAFTVを投与された期間として含まれてしまう、

(つまり、AFTV投与後のはずなのに投与していない期間がゲタとして履かされ、長ければ数年分も〔AFTV群〕の生存期間に付加されてしまう、だから、見かけ上では〔AFTV群〕がゲタの分、長生きしているように見える)

という問題があったのです。

そうなると前記の(1)で述べた事実(中央値)は、事実としては間違いないのですが、これがそのまま、
「だから、自家がんワクチンを投与した時点から自家がんワクチンは有効だった、とは必ずしも言えない」というのが上記の「欠点」です。

このゲタの期間は、専門用語で(AFTV投与を受けているくらいですから、この間、患者さんは亡くなっているはずもないため)、「不死時間バイアス」と言います。

「不死時間バイアス」があるため、それを除去した上記の(2)のようにして比較しなければならない、というわけです。

ただし、(1)の場合は、通常の生存期間分析によく使用されているように、カプラン?マイヤー曲線を描いた上で、「AFTVの効果が観察期間を通じておおむね一定である」と仮定するCox比例ハザードモデルを用いて群間差を検定し、p値がp<0.05となれば、統計学的に有意差がある(AFTVが効いているといってよい)と判断します。

しかし、(2)の場合のように、転移が検出された時点からAFTV投与開始までの期間が患者ごとに異なり、バラバラの場合には、単純に「AFTV群」と「非AFTV群」に分けて比較すると、公平な比較にならないことがあります。
なぜなら、ある患者は早い時期にAFTVを開始し、別の患者はかなり後になってから開始するため、観察期間中に患者の「AFTV未投与」「AFTV投与中」という状態が時間とともに変化するからです。

そうなると、各時点において実際にAFTVを受けている患者と受けていない患者を比較できるよう、通常のCox比例ハザードモデルではなく、「時間依存性Cox比例ハザードモデル」という解析方法を用いて解析しなければならない、とされています。

しかも、
(1)の場合のように、明瞭な統計学的な有意差(p=0.00365)が出て大成功したようにみえても、
(2)の場合は、そうそう簡単には行きませんよ、
となると、頭をかかえてしまいます。

さて、具体的にはどうすればいいでしょうか?

この解説の続きは、ぜひ、「 乳がん治療の投稿論文がわずか2日で査読を通過、出版されました ~その2~ 」をお読み願います。お楽しみに。

References

1.Kuranishi F, Miyazaki T, Tagashira T, Fujii A,
Yuba M, Miyake I, Fujita T, Suzuki T, Masuda H,
Makihata T, Nakagou S, Ohno T.
Thirty-Five-Year Follow-Up Real-World Data
Revealed the Efficacy of Autologous Formalin-
Fixed Tumor Vaccine on Metastatic Breast Cancer-
A Target Trial Emulation.
Clin Breast Cancer. 2025 Dec;25(8):e1011-e1022.e5.
doi: 10.1016/j.clbc.2025.06.008.

You Tubeで【自家がんワクチンとは】をご覧ください。

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