乳がん治療の投稿論文がわずか2日で査読を通過、出版されました ~その2~ 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

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乳がん治療の投稿論文がわずか2日で査読を通過、出版されました ~その2~

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今回の一つ前の「セルメディシンニュースNo.695-乳がん治療の投稿論文がわずか2日で査読を通過、出版されました~その1~」では、「“自家がんワクチン”、転移した乳がんで世界最長の延命効果を示す」と、いささか派手な共通タイトルの下で発信された4本のセルメディシンニュース、

 No. 649 プレスリリースを発信しました → https://cell-medicine.com/topics/2756

 No. 650 (続1)ターゲットトライアルエミュレーション法とは→ https://cell-medicine.com/topics/2763

 No. 651 (続2)高い安全性があります→ https://cell-medicine.com/topics/2773

 No. 674 正式論文が出版されました→ https://cell-medicine.com/topics/2863

の根拠論文(Ref. 1)について、

著者自身が、
~~~~~~~~~~~~~~~~
・自ら論文の「欠点」に気が付いたこと、
・その「欠点」とは、
  「達成!世界新記録、自家がんワクチン、転移した乳がんで世界最長の延命効果を示す」という事実は間違いない
  のですが、延命効果の計算方法に問題が潜んでいたこと、
・潜んでいたのは「不死時間バイアス」であったこと、
・「不死時間バイアス」を除去するため、通常の「Cox比例ハザードモデル」による解析ではなく、
 「時間依存性Cox比例ハザードモデル」という解析方法によらなければならなかったこと、
~~~~~~~~~~~~~~~~
を述べました。

この根拠論文は、査読段階でその筋の専門家により審査されることで国際的に知られている、乳がん臨床医向けの専門学術誌である、“Clinical Breast Cancer”に投稿したものです。
そこに論文が出版されたということは、筆者らだけではなく、論文出版前に査読した専門家も、この学術誌の編集長も、論文の「欠点」に気が付かず、出版にゴーサインを出していたことを示しています。

この根拠論文のなかでは、「乳がんの遠隔転移が検出された時点を起点」として、

・検出後のどこかで自家がんワクチン(AFTV)が投与された方々で、どこかで放射線治療を受けていて、
 しかしAFTV投与前後6ヶ月間は抗がん剤治療を受けていない(Optimum AFTV Set療法と命名しました)
 という方々に絞りこんだ患者群、 〔AFTV群〕(症例数 n=13)
と、

・転移検出後、一度も自家がんワクチンが投与されなかった(通常の標準治療である抗がん剤治療と放射線治療は受診している)患者群、 〔対照群〕(症例数 n=35)

とを比較したとき、

通常の「Cox比例ハザードモデル」による統計解析では、
  p=0.00365
と、明瞭に〔AFTV群〕が〔対照群〕に比べて長生きしていることを示す統計学的な“有意差”がありました。

では、「時間依存性Cox比例ハザードモデル」による統計解析ではどうだったのでしょうか?

☆彡☆彡☆彡

結果はなんと、 p=0.09617 でした。

統計学的な“有意差がなかった”のです。

ここで誤解なきように申し上げますと、統計学的には、p<0.05 を“有意差あり”と規定しています。

いいかえれば、こうなった場合はOptimum AFTV Set療法は有効だと言って良い、というわけです。

しかし、p≧0.05の“有意差なし”では有効だとは言えません。

だからといって、(よくある誤解ですが)、無効だ、とも実は言えません。

このp値 0.09617 からでは、Optimum AFTV Set療法が「効いたかどうかはわからない」、
ただし、p<0.1なので、 「Optimum AFTV Set療法が効いている傾向がある」

というのが、統計学的には正確な表現だと筆者は理解しています。

しかし一方で、「本当にOptimum AFTV Set療法は有効ではないのか」、という疑問に答えるための解析方法が別にあります。

 A:ランドマーク解析
 B:制限平均生存時間解析
  (Restricted Mean Survival Time、RMST)

です。

A:ランドマーク解析 とは、臨床医学における生存時間解析の一手法で、解析者が決めた特定の時点(ランドマーク時点)での患者の状態を基に、その後の予後を予測する方法です。

今回は、乳がんの遠隔転移が検出された時点(起点)から、1年後、1.5年後、2年後をランドマーク時点に設定してみました。

例えば、1年後に生存している方だけを取り上げ、その前にOptimum AFTV Set療法を受診していた方を〔AFTV群〕とし、まだ受診していない方を〔対照群〕(*)にして、通常の「Cox比例ハザードモデル」による統計解析を実施しました。

(*)この〔対照群〕には、1年を過ぎてからOptimumAFTV Set療法を受診した方も含まれるため、もしOptimum
AFTV Set療法が効いていると、見かけ上、対照群の生存期間が長くなってしまうという問題点があります。
それでも、〔対照群〕よりも〔AFTV群〕が長生きしているならば、Optimum AFTV Set療法の効果は確かだと解釈できます。

また、B:制限平均生存時間(RMST)解析 とは、比較する2つの群の“平均生存期間の差” を直接示す指標です。
ある時点(ランドマーク時点がよく使われます)から、解析上の打ち切り時間(cutoff time)までに、一方の群が他方の群より平均してどれだけ長く生存しているかを表します。

例えば、 RMST差 = +3.2か月 であれば、「設定した追跡期間内で、治療群は対照群に比べ、平均3.2か月長く生存した」ことを意味します。

最近は、AとBの方法を組み合わせて、臨床試験にかけられた治療法の効果を解析するのが流行となっています。

さて、今回の場合、A:では、ランドマーク時点を1.0年、1.5年、2.0年に設定したとき、
ハザード比はそれぞれ、0.4035、0.4245,0.4802と安定していました。

0.4台のハザード比は、〔AFTV群〕と〔対照群〕のカプランマイヤーカーブの開き具合がかなり大きい(〔AFTV群〕の方が長生きしているように見える)ことを示しています。

また、ハザード比の95%信頼区間は、0.1-1.4程度でいずれも意外に狭いものでした。

ハザード比が安定していて95%信頼区間が意外に狭いことは、なんのことはない、〔AFTV群〕の患者数が少なすぎて、統計解析するときの検出力が落ちていることを示唆しています。

そこで、症例数は少ないながら、〔AFTV群〕と〔対照群〕の間で、平均した生存期間の差がどのくらいあったのかを、B:制限平均生存時間(RMST)解析で調べてみました。
 
B:では、ランドマーク時点を1.5年に設定した場合、解析上の打ち切り時間(cutoff time)を
 ・3年にしたとき、RMST差は、 0.267年、 p=0.002
 ・5年にしたとき、RMST差は、 0.875年、 p=0.017
 ・8年にしたとき、RMST差は、 1.950年、 p=0.018
 ・10年にしたとき、RMST差は、2.621年、 p=0.028
 ・12年にしたとき、RMST差は、3.307年、 p=0.037
(p値はいずれも、two sided Wald testで算出)でした。

打ち切り時間を長くすると、RMST差が直線的に増えていき、p値も全部文句なく“有意差がある”ことを示しています。

ランドマーク時点を1.0年や2.0年に設定しても、同様の傾向を示していますので、
B:RMST解析 でなら、〔AFTV群〕で使用したOptimumAFTV Set療法は有効だった、と言えます。

この点を、Clinical Breast Canser誌で査読した専門家も、この学術誌の編集長も、我々の修正論文原稿をみて、一瞬で結果を理解し、わずか2日で出版を受理、アッという間にweb出版した(Ref. 2)、というわけです。

いかがでしょうか。

学術界の裏話のような解説でしたが、このレベルの学術論文を出版できるほどでなければ、世界では、Optimum AFTV Set療法の芯である「自家がんワクチン」の実力を認めてもらえません。

本邦では、「自由診療で実施されているがん免疫療法」には、さまざまな種類があり、インターネット上で派手な宣伝が行われていますが、そのがん免疫療法のホームぺージに、国際的な学術誌上に出版した論文があるか否かを見れば、すぐにそのがん免疫療法の実力がわかります

一般の方では、学術論文の内容はややこしくて理解しがたいところがあると思いますが、理解できなくても、ホームぺージにて紹介されている学術論文の数だけカウントしてみてください。

その数は、ほぼ、そのがん免疫療法の実力を反映しています。

弊社の場合は、https://cell-medicine.com/company/publications/categories/pub1に、「主要原著論文」と題して、国際的な学術論文のリストを掲げております。

どうぞ、その数をみて「自家がんワクチン」の実力をお考えいただければ、たいへん有難く存じます。

References

  1. Kuranishi F, Miyazaki T, Tagashira T, Fujii A,Yuba M, Miyake I, Fujita T, Suzuki T, Masuda H,Makihata T, Nakagou S, Ohno T.
    Thirty-Five-Year Follow-Up Real-World Data Revealed the Efficacy of Autologous Formalin-Fixed Tumor Vaccine on Metastatic Breast Cancer-A Target Trial Emulation.
    Clin Breast Cancer. 2025 Dec;25(8):e1011-e1022.e5.
    doi: 10.1016/j.clbc.2025.06.008.
  2. Miyazaki T, Kuranishi F, Ohno T.
    Additional Landmark and RMST Analyses Addressing Immortal Time Bias in the Evaluation of Autologous Formalin-Fixed Tumor Vaccine for Metastatic Breast Cancer.
    Clin Breast Cancer. Letter to the Editor, Articles in Press, June 23, 2026.
    https://www.clinical-breast-cancer.com/article/S1526-8209(26)00091-1/abstract

You Tubeで【自家がんワクチンとは】をご覧ください。

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