――――――【キーポイント】――――――
がん治療のために広く普及しつつある免疫チェックポイント阻害剤ですが、免疫関連の有害事象(あらゆる好ましくない症状)の発生率は40%もあるそうです。
患者さま、貴方は大丈夫ですか?
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先週発信したセルメディシンニュースNo.618で申し上げましたが、がん免疫療法については、オプジーボやキイトルーダ等の免疫チェックポイント阻害剤が市販されてから、本邦のみならず、世界的にも非常に盛り上がっています。
ただし、その治療で起こる免疫関連の有害事象(あらゆる好ましくない症状、irAE)の発生率は想像以上に高いことが、この度、膨大なデータ解析から明らかにされました(Ref. 1)。
有害事象のうち、それが発生したのは薬によるものだとの因果関係が否定できない場合を、
その薬の「副作用」と言いますが、
免疫チェックポイント阻害剤では、通常は起こらないような(強い免疫反応を起こした結果としか考えられない)好ましくない症状が多いですから、この場合の 「有害事象はほぼ間違いなく免疫チェックポイント阻害剤の副作用そのもの」と考えられます。
2024年11月12日に来信したASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)からのニュースでは、
“なんと40%”もの患者さんで、免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連有害事象(irAE)が報告されているそうです(Ref. 1)。
この論文では、272件の臨床試験データを解析していますが、対象となった免疫チェックポイント阻害剤受診者数は、305,879例もあります。
また、そのうち、58,291例でirAEがあったとされ、さらにそのうち、確かに一般的なirAE(グレードは問わない)があったとされた症例は、平均で、
40.0%
また、グレードの高い重篤なirAEがあった方は平均で、
19.7%
もあったとのことです。
従来からも懸念はされていましたが、これは、想像以上に高い割合で、免疫チェックポイント阻害剤の副作用が起こっていたと言えるでしょう。
しかも、重篤なirAEには「死亡」という非常に怖い副作用も含まれています。この点、臨床現場では軽視されていないでしょうか?
すでにセルメディシンニュースではこれまでに何回も免疫チェックポイント阻害剤の強烈な副作用について注意喚起をしてきています。
最近のニュースの例をあげますと、
No. 561, 2023.09.28
がんの免疫チェックポイント阻害剤による治療と心血管への副作用
→ https://cell-medicine.com/topics/1921
No. 569, 2023.11.24
免疫チエックポイント阻害剤の実臨床での安全性・有効性はどうか?
→ https://cell-medicine.com/topics/1939
No. 574, 2023.12.25
免疫チェックポイント阻害剤の効果は高いが副作用もきつい。患者さんは耐えられるか?
→ https://cell-medicine.com/topics/1956
No. 606, 2024.08.28
免疫チェックポイント阻害剤注入時に汎用されるステロイド剤には功罪あり
→ https://cell-medicine.com/topics/2372
などがあります。
このように、免疫チェックポイント阻害剤は決して安心して治療に使えるものではありません。
しかし一方で、免疫チェックポイント阻害剤には、非常に有用な一面があります。例えば、
No. 579, 2024.01.29
がん免疫療法は遺伝子変異の多い大腸がんの第1選択肢に-化学療法時代の終焉へ
→ https://cell-medicine.com/topics/1968
をご覧ください。
大腸がんで、マイクロサテライト不安定性が高い(microsatellite instability-high (MSI-H))、
または、
DNA複製ミスの修復機構に欠陥がある(mismatch repair-deficient(dMMR))
というタイプならば、
「ニボルマブ(オプジーボ)+イピリムマブ(ヤーボイ)」
を最初から投与した方が、現在の標準治療になっている強力な化学療法剤を混合した治療法(苦しい副作用があります)よりもはるかに良い、のです。
また、弊社の自家がんワクチン療法と組み合わせれば、非常に効果的ながん免疫療法、
「アクセル・オン/ブレーキ・オフ戦略」が実行できます。
(こちらの例をご覧ください ↓)
No. 579, 2024.01.29
自家がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤との併用:症例報告論文が受理されました
→ https://cell-medicine.com/topics/816
自家がんワクチンには、強い副作用はありませんから、
「自家がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤の併用は安全で効果的だという最初の症例」
がでています。
要するに、免疫チェックポイント阻害剤の使いすぎは怖い、使わないのはもったいない、ということですね。
どのような塩梅でがん治療に免疫チェックポイント阻害剤を使うかは、決してマニュアルどおりには行きません。ひとえに臨床現場の先生方の腕次第となっています。
Reference
1.Jayathilaka B, et al.
Cancer and treatment specific incidence rates of immune-related adverse events induced by immune checkpoint inhibitors: a systematic review.
British Journal of Cancer; https://doi.org/10.1038/s41416-024-02887-1
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