トルコの国際シンポジウム:たいへん刺激的な会合でした 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

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トルコの国際シンポジウム:たいへん刺激的な会合でした

最新の学会から 

トルコのイスタンブールで先週1月30日に開催された国際シンポジウム

『Cybernicx Future 2026』(サイバニクスの将来 2026)

に、主催者のDr. Mehmet Akdemir(整形外科医)から招待を受け、講演を行ってきました。

この会は、2024年の第1回に継ぐ第2回として開催されましたが、
もともとは、日本のサイバーダイン社の
・体外装着型サイボーグ HAL(Hybrid Assistive Limb)
の技術開発を起点にして、関連する科学技術全体を見渡したとき、言い換えれば、前回のセルメディシンニュースで申し上げましたように、 人・機械・情報を統合し、人の身体機能を“支援・拡張・再生”していこうとしたとき、

・将来、どんな発展が予想されるか、
・そのシーズとして現時点ではどんな技術が開発されつつあるか、

について、サイボーグやロボット技術という狭い分野にとらわれず、あえて学術的な視点を横に大きく広げていって、いったい何が見えるかを議論するという会でした。

確かに、招待されていた講演者は全部で12ヶ国に及んでいました。

サイバニクス(Cybernics)とは、
 人・ロボット・情報系を中心に、多様な学術領域(脳科学、神経科学、生理学、心理学、行動科学、ロボット工学、AI、倫理、法学、社会科学など) を融合した“超学際的な技術・研究分野”
とされていますが、それをこの国際シンポジウムで体現しようというわけです。

サイバニクスは、筑波大学の山海嘉之教授が主導している新しい学術領域です。第1回に続いて今回も山海先生の基調講演がありました。

内容は盛りだくさんで、とても全部はフォローしきれませんでしたが、印象的だったのは、マレーシア政府が広大な敷地を用意し、7つの大型ビルディングを集合させた巨大なサイバニクスセンターを建設しているとのことでした。

もちろんそこには、サイバーダイン社のHALによるヒトのリハビリ治療が可能な大型病院も含まれています。しかもこのような巨大な施設をマレーシア国内に5~6ヶ所は設置していこうという大型構想があるのだそうです。
ここまでくると、もはやマレーシアが国家戦略として展開しようとしているのは明らかです。
近隣の東南アジア諸国だけではなく、全世界に向けて、熾烈な国家間の科学技術開発競争を勝ち抜こうという意図なのでしょう。

また、筆者が驚いたのは、ヒトでも切断された神経を再生できるという技術的な証明でした。

USAからのシンポジスト2人(Dr. John Krakauer,Dr. Parag Gad)の講演の中では、
事故等で脊髄を損傷、切断したため、下半身が全く動かなくなった患者でも(サイバーダインのHALは体内の神経活動情報を皮膚に貼りつけたセンサーで集めていますが)、ピンポン玉サイズの制御機器を直接脳内に埋め込み、
そこから神経刺激情報を発信、下半身側の機器で受信して下半身を駆動し、リハビリテーションを行っていくと、切断されていた脊髄の太い神経線維が、切断部の上下から再生してきて、やがて患者の自立歩行が可能になるという、before/afterの動画が、1例だけではなくゾロゾロ示されていたことでした。

筆者の常識、「切断された太い神経は再生することはない、成熟した神経細胞は分裂増殖して再生することはない」というのは、すでに過去のものだったのです。

ということは、弊社が参加している現在の医師主導第III相治験のターゲットである、
・最悪中の最悪のがんと言われる脳腫瘍のうちの膠芽腫
では、発見されるとともかくも手術で摘出する、そのため大きな空洞が脳内にできてしまう、というのが標準治療の現状ですが、
(遠い将来になるかもしれないとはいえ)上記の技術の延長線上には、ヒトの脳でも再生医療が可能だ、と見えてきます。

別の演者で、脳ネットワーク解析の国際的研究者、Prof. Dante Mantini(イタリア)は、「今や3人に1人が人生のどこかで神経障害に陥る、neurorehabilitation(神経リハビリ)は必須だ、そのために医者と科学技術者による共同デザイン(Co-design)が必要だ」と強調していました。

山海先生も、すでに Human/Machine の境界線はなくなりつつあるとの認識を持っていましたので、この国際シンポジウムは、今後、大発展していくだろう、間違いなくトルコの国家戦略の一つとなっていくだろうと予想されました。

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さて、かくいう筆者が発表した演題、

の講演は、数百人の聴衆にどう受け止められたのでしょうか。

筆者の一つ前の演者は、京大iPS細胞研究所・(ノーベル賞受賞者の山中伸弥先生の直下で研究されてい
る)菊池哲広先生で、ダメージを受けたヒト脳に対するiPS細胞を用いた脳修復の件でした。

著名論文誌natureに2報も出されていたもので、やはりすごいなと思いました。
 
一方で筆者の場合は、何にせよ「自家がんワクチン」についてです。

がんに対する臨床効果の話、特に遠隔転移のある乳がん患者について、“世界最長の延命効果がある”という内容を中心に紹介しました。

丁度20分の講演が終わったとき、聴衆全体がポカンとしていました。

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(内容については、
 前回のセルメディシンニュース No.682
 → https://cell-medicine.com/topics/2894
   または、
   https://cell-medicine.com/cases/results-breast-cancer-effect.php
   をご覧ください)
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ありゃりゃ、これでは全く理解してもらえなかったかな、と思いきや、
演壇を降りてきたら、若い方々に次々に取り囲まれて、
『今の話はとても分かりやすかった』 と、繰返し繰返し感謝されました。

今回の国際シンポジウムでは、筆者は他国の演者の方々から非常に大きな刺激を受けましたが、筆者の“超学際的”な講演でも、トルコの若い参加者にそれなりの刺激を与えることができ、招待された側の一人としての責任をしっかり果たせたと思っています。

You Tubeで【自家がんワクチンとは】をご覧ください。

注:弊社は病院やクリニックではなくバイオ企業であるため、症例報告や論文内容のWeb掲載は許容されています。

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