自家がんワクチン療法を受診、その後、2024年11月末時点までにフォローアップ調査した膵臓がん症例のうち、経過報告があった症例についてソフトクライテリアの観点から評価した治療成績を以下の表と、その下の代表的症例にまとめました。
(注) 弊社が病院やクリニックではなくバイオ企業であるため、症例報告や論文内容のホームページ掲載は許容されています。
がん種 | 膵 |
---|---|
全症例数 | 148 |
1:有効 | 6 |
2:長期不変・無増悪 (1年以上) |
14 |
3:不変 (6ヶ月以上1年未満) |
3 |
4:無効 | 35 |
改善率1: (1+2)/(1+2+3+4) |
34.5% |
5:経過観察中 | 3 |
6:投与中止 | 10 |
7:転帰不明追跡不能 | 68 |
改善率2: 7.転帰不明も 無効とした場合 |
15.9% |
8:未投与 | 9 |
9:未評価 | 0 |
(注)改善率1=(1.有効+2.長期不変・無増悪)/(1.有効+2.長期不変・無増悪+3.不変6ヶ月以上1年未満+4.無効例数)
→ もっとみやすい改善率-1、改善率-2、表中の項目1~9の定義は → こちらです
代表的症例
〔症例0053〕
直径3cmの肝転移巣あり。だが増殖が遅いため自家がんワクチン接種。実施後のCTで2cmに減少したとのこと。しかし、その後急速に悪化。死後、胆管がんとの重複癌であったことが判明。
(注)この症例では、自家がんワクチンによる非常に高い選択的な作用(狙い撃ち作用)があったことを示しています。作製原料とした肝転移巣が膵がんだったため膵がんには有効だったのですが、重複していた胆管がんが自家がんワクチンの影響を全く受けず、結果的に無治療状態となったため急速に悪化したものです。(なお、この症例は「その他のがん」の中の「重複がん」に分類されているため、上記の表中の数値には含まれていません。)
〔症例0621〕
2006.06、膵頭部がんに対して膵頭十二指腸切除、術後補助化学療法(ジェムザール、 当初1500mg/body/隔週、2007.01からの累積で21回 )施行 、2007.10自家がんワクチン接種、以後2008.10現在でも低用量ジェムザール投与継続( 1000mg/body/隔週、 累積20回以上 )、 腸間膜リンパ節転移巣(赤い矢印の先)が1年以上の長期不変となっている。
このリンパ節転移は重要で、外科医としては再発リスクは非常に高い症例であったと判断していた。しかし、2010.12末までの間にほとんど見えなくなった。2019.01再発なく普通の生活中。主治医診断は「根治」。
〔症例 2319〕
2014年10月に手術、他院での手術時の病理組織検査報告書では、「腫瘍径は2.4 x 1.6cm大。膵頭部の腫瘍は低分化腺癌と中分化型管状腺癌の浸潤性膵管癌からなり、繊維化を伴いつつ周囲脂肪織へ浸潤している。脈管侵襲は、静脈侵襲が目立つがリンパ管侵襲は所々に疑わしい所見を認め、神経周囲浸潤は軽度である。膵断端は陰性、後腹膜側の剥離面は陽性の可能性あり。リンパ節転移なし」であった。静脈侵襲があったことから再発/転移可能性が極めて大と判断。
2015年3月より5月まで計6回自家がんワクチン接種。さらに同年11月より翌年1月までオプジーボ20mg/body(0.4mg/kg程度)を計5回投与。この際、副作用(下垂体前葉不全)がありオプジーボの投与継続は中止。2021年6月現在でも全く問題なく、術後6年7ヶ月超健在。
早期の再発転移がないため主治医は「自家がんワクチンが有効だった」と判断しているが、自家がんワクチン最終接種と少用量オプジーボ投与開始の時間差が6ヶ月と大きくても、これらによる「アクセル・オン/ブレーキ・オフ戦略」が効いた可能性もある。
〔症例 3155〕
(第23回日本統合医療学会(2019.12.07-12.08)で演題発表)
2017年3月のCTにて膵体部に4cm大の腫瘤を認め、膵体尾部切除(Stage IIA:T3N0M0)後、S-1による化学療法を施行するも副作用のため中止。同年10月のPET-CTにて膵体尾部に膿胞性腫瘤の再発と左鎖骨上リンパ節転移(3.2×2.4㎝)と多発性肺内転移、脾動静脈・上腸管膜動脈浸潤を疑う所見と腫瘍マーカー(CEA・CA19-9・SPAN-1)の上昇を認め、他院での免疫療法が無効であったため、この時点で余命2ヶ月の診断。2018年2月より当院にて高濃度Vitamin C点滴・Vitamin D・セラクラミン内服等開始、5月末よりゲムシタビン(GEM) 7クール施行するも、同年11月のCT上膵体尾部腫瘤径に変化なく、鎖骨上窩リンパ節(3.8×2.7cm)と多発性腫瘤陰影の増大を認める。
2019年2月より自家がんワクチン1クール(3回/2週間隔)施行後、腫瘍マーカーの低値化に伴い、PET-CT上肺転移を疑う多発性結節影と左鎖骨上窩リンパ節と腹膜播種巣の縮小を認めた。以後、在宅緩和医療を継続、2021年に永眠。
それでも「余命2か月の宣告から3年以上延命されたのは大変素晴らしい」との主治医評価あり、自家がんワクチンのおかげであることを遺族からも感謝されているという。